知り合いから、「〇〇先生は今まで負けたことがない、すごい弁護士らしいです」と聞きました。
それを聞いて、よく考えられているなあと感心しました。
勝ち負けというのは、野球やサッカーなどのルールのしっかりしたゲームでもない限り明確ではありません。
訴訟であれば、勝訴、敗訴で明確ではないかと思われるかもしれません。
例えば、原告として1000万円の請求の訴えを提起して、裁判所から900万円の一部認容の判決がされた場合について考えます。900万円の請求が認められたことを捉えると勝訴ですが、100万円の請求が退けられた点を加味すると、完全勝利なのか疑問が残ります。少なくとも負けではないでしょうが、勝ったかどうかは請求の認容額だけで決めることはできません。
請求を受けている被告側で、1000万円を支払えと請求を受けていて、最終的に500万円の和解で終わった場合について考えるともっと複雑です。
500万円減額した点を捉えると、勝ったとなります。特に、ご本人もこの件については800万円くらいは払わないといけないと考えていた場合は、ご本人の考えからも300万円の支払いを逃れたことになりますから、勝ったといってよいと思われます。
対して、ご本人は1円も支払いたくないと考えておられる場合は、1000万円から500万円に減額されたので、勝ったとは到底言えず、痛み分け、引き分けというのでしょうか。
ご本人にとっては負けでしょうが、弁護士としては、一部勝っているから負けたわけではないと言いたくなりそうですね。
弁護士の勝ち負けは、依頼者のご意向、お考えによります。
裁判であっても単純に決められるわけではありません。
負けたことがないということは、お客様の要望をできる限り実現してきたことを意味し、弁護士としては誇らしいことです。そして、専門外の方からすればとても魅力的に聞こえるのだろうなと感じました。
また、すべて勝ったと表現するのではなく、負けたことがないという表現もよくよく考えられているなと感心した次第です。
弁護士の執務において、勝ち負けはご本人の中にあるということを肝に銘じて、日々執務しております。
もちろん、勝負事である訴訟である以上は、結果が大事だと思いますが、お客様にどれだけ寄り添えるか、最終的に出た結果に対してそれだけご満足いただけるか、そしてその後のお客様の人生をどれだけ良いものにできるか、そのような視点で考えております。
相談を受けた時点から、最終的な結果が出るまではもちろんですが、その後も人生の伴侶としてお役に立てるような関わり方を弁護士としてしていきたいと心から思っております。
人生もそうですが、勝ち負けだけではなく、どれだけその瞬間に満足できるか、将来的に過去を振り返って、良かったと思える人生を送れるかが重要だと思います。
稲吉法律事務所は、人に寄り添えるサポートを心掛けています。
男性弁護士には相談しづらいことも、女性弁護士が在籍していますので、安心してご相談ください。