創業8年を迎えて

 

当事務所は、お陰様で創業8年、和敬法律事務所として法人化して1周年を迎えることができました。

8年前、私は弁護士たった1名、わずか5坪の小さな事務所で開業いたしました。
これまで支えてくださったご依頼者様、ご相談者様、大切な方をご紹介くださった皆様、一緒に走ってくれた事務員の皆さん、そして相手方当事者や代理人の弁護士の皆様に、心より感謝申し上げます。

思い返せば、この8年間の間で本当に多くの人と関わることができました。年々、関わる人の人数も増えていき、それだけ多くの人に貢献できていると同時に、多くの人にお世話になっていることを感じます。
きっとこれから創業10年、15年、20年と年数を重ねていくうちに、新たな出会いを重ね、もっと多くの人と関われると思うと、ワクワクが止まりません。

実は、勤務弁護士時代の私はお世辞にも優秀とは言えず、最終的には肩たたきをうけて独立することになりました。

元裁判官だった私は、無意識のうちに裁くという視点から人の話を聞いてしまっていたのです。
しかし、目の前の人も含めて裁くという視点に立っている限り、心を通わせることはできません。その方と一体になってしまっては裁くことはできないからです。

人と距離を置いていると、下にズレれば卑屈であり、上にズレれば上から目線になってしまいます。当時は「稲吉弁護士にお願いしたい」と言ってくださる方はほとんどいませんでした。

「このままでは終われない」

そんな私を突き動かしたのは、かつて母が幼いころにかけてくれていた「天下を取る男だ」という言葉でした。

そこから私は、生まれ変わる決意で、人から誘われたり少しでも興味が湧いたことは、何でもまずやってみることにしました。経営者としてや人間の存在としてのいろんな学びを深め、さまざまな趣味を持つ中で、人と人との繋がりや人として血が通うようになってきました。

最近、ふと、雑誌『致知』2020年4月号を引っ張り出して読み返しました。
昨年亡くなられた千玄室宗匠の特別講話「生涯、茶の心で生きる」の記事です。

記事の中で宗匠は、東日本大震災の被災地で被災者の方々にお茶を差し上げられた際のお話をされていました。

一碗のお茶を飲んでいただいて、少しでも苦しみ、悲しみから逃れられるようにしなければならない。
自分も苦しみの多い人生にあるとしても、思いやりを忘れず、他の人に少しでも何かして差し上げることが平和につながるのではないかという趣旨でした。

この記事に強く心を打たれ、私はお茶のお稽古に通うことを決めました。なお、先日、ありがたいことにお茶名も頂戴いたしました。

さらに宗匠はこう続けられていました。

お茶の精神は『和敬』なのです。どんな場面でも和やかに、どんな人も差別することなく接する。茶室に入れば、誰もが一緒であると。

そして、自分も苦しみを抱えた人に少しでも寄り添い、どんな人も差別せず和やかに迎え入れられる場所をつくりたいという想いから、法人化する数年前から、現在の法人名ととロゴを定めて、今日まで歩んでまいりました。

5坪の部屋で一人、自分の不甲斐なさと向き合っていたあの日から8年。
思えば、遠くへ来たものだと深く感慨を覚えております。

裁くのではなく、寄り添うこと。
どれほど自分が苦しい状況にあっても思いやりを忘れず、一碗のお茶を差し出すように、目の前の人のために力を尽くすこと。

これからも和敬法律事務所は、創業当時の原点と「和敬」の心を胸に、一人ひとりのご相談者様の人生に真摯に寄り添ってまいります。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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