弁護士は、相談を受けると、法律の枠内で解決することに捕われがちです。 もちろん、法律の専門家である弁護士が法律から離れて何かするということは、資格外のことになってしまいます。私がいくら物理的に戦える弁護士を目指していても、依頼者や相談者も、腕力で解決することは期待していません。 しかし、時に正攻法にこだわりすぎることで、無駄な労力、費用が掛かってしまうことがあります。 数年前に寄せられたネット上の悪評への対応例をお示しします。 ある経営者から、転職サイトに、事実とは異なる自社の悪評が書き込まれてしまい、気になっているというご相談をいただきました。 インターネット上の誹謗中傷や悪評に対して、法律が用意している正攻法といえば、発信者情報開示請求です。 裁判所を通じて、どこの誰が書き込んだのかを特定し、その後に削除請求や損害賠償請求を行うという流れになります。 しかし、2段階の訴訟が必要で、第1段階の特定だけでも数ヶ月から半年以上の長い時間がかかり、裁判手続に伴う弁護士費用や実費などのコストがかさみますし、判決は、財産を取り立てても良いという許可状のようなものですから、相手に財産がなければ金銭的回収も難しいことが多々見られます。 経営者としては、悪評が靴に入った小石のようなもので、日々嫌な思いをされていますから、この数ヶ月という時間はあまりにも長く、精神的な負担も無視できません。 そこで少し視点を変えて、一旦、本当の目的、目標について考えてみました。 書き込みをした犯人を特定して吊るし上げることなのか、悪評を速やかに消して、会社の未来を守ることなのかと。 当然、経営者ですから、会社のことを考えれば後者を選択します。 そこで発想を変えて、経営者に質問すると、おそらく投稿に近い時期に退職した元従業員ではないかと心当たりがあるとのことでした。 そこで、その元従業員に直接、一本の電話をかけてみることにしたのです。 電話で、会社の転職サイトに事実と異なる書き込みがある。事実に反する以上、依頼を受けた弁護士としては、法的な手続を進めざるをえない。書き込んだ人物が特定された場合は、一般論として、訴訟の被告となり、対応することになります。そして損害賠償請求が通ると、金銭的負担も発生することがある。とお伝えしました。 当人は身に覚えがないということなので、もし他に心当たりがあれば、当時の同僚などにすぐに消すよう伝えてもらえないかと依頼しました。 犯人を特定せず、自分じゃないという元従業員の話を前提に、淡々と現状と虚偽の書き込みがある場合の一般論をお伝えしたのです。 そして、電話を切った後、その日のうちに口コミは削除されていました。 法律相談において、ある程度、事案を聞いたら、事前に準備していたような弁護士の考える最強・最適法的手続の伝授となってしまいがちです。 しかし、自分が持っているもの、準備しているものがこの相談者の悩みを解決できないかもしれない。解決できても最善ではないかもしれないと、人の悩みを解決する仕事をするときには自戒することが必要です。 もちろん私は弁護士ではありますが、それ以前に相談者と同じ人間です。トラブルには人の心情が必ず付いてきます。その心情を人として理解することが、弁護士である前に、問題解決には必要なのです。 ただ争うだけではなく、人と人が理解し合い、納得してこそ、最善の結果となります。 長年、弁護士をやっていますが、どうしても弁護士というのは自分の資格ありきで対応しようとしてしまうため、なかなか人に寄り添うことができない弁護士もいます。 でも私は、そうではないと思うのです。 弁護士こそ、まずは一人の人間として、人に気持ちに寄り添うことがとても重要だと思っています。 私は法律のプロであると同時に、誰よりも人の気持ちにに寄り添える弁護士でありたいと思っています。 その想いが必ず最善の結果へ繋がると信じています。 今、何かトラブルや悩みを抱えて、目の前の壁に行き詰まっている方へ。 一緒に、視野を広げたり、角度を変えてみたりしませんか? 想像以上に、意外と簡単に解決することもあります。 できないと思っている物事も、悲壮感ではなく、人生のスパイス、燃えるシチュエーションと捉えたら、いい方向に転がり始めます。 和敬法律事務所は、単に法律をあてはめるだけでなく、ご相談者様の本当の望みに寄り添い、共に最善の解決策を考えていく存在でありたいと思っています。どんな小さなことでも、お気軽にお話をお聞かせください。

