「事実」と「解釈」のぐるぐる巻きを解く


日々、法律相談をお受けしていると、法律家のある癖に気づかされます。

それは、ご相談者様のお話をお伺いしながら、無意識のうちに「客観的事実(実際に起こったこと)」と「主観(本人の解釈・ストーリー)」を切り分けて捉えているということです。

なぜそんなことをするのかというと、裁判所という場所が、どこまでも「起こった事実」でしか判断を下さない場所だからです。

たとえば、配偶者に裏切られたから離婚したいというご相談をいただいたとします。
ご相談者様にとっては、まぎれもない裏切りなのです。
しかし、離婚請求が法的に通るかどうかは、「起こった事実」が何かで決まります。

もし、相手が別の人と性交渉を行ったという客観的な事実があれば、裁判所も不貞行為、すなわち裏切りと認めてくれます。
一方で、たとえば、朝ごはんで気に入らないものを出してきたということを指しているとすれば、どれほどご本人が「心を踏みにじられた」と感じていても、それだけで離婚理由とは認められません。もちろん、背景にある長年の関係性等で、一般人の目線から離婚を認めるべきほどの行為であるとされることもありえます。
裁判所は、ストーリーだけでは、同意して請求を認めてくれないのです。

ところが、私たちの日常において、【実際に起こったこと】と【自分の解釈】がぐるぐる巻きになって、まるで「動かしがたい客観的事実」のようになってしまっていることがあります。
特に多いのが、職場やプライベートでの人間関係です。

「あの人は私のことが嫌いに違いない」
「あの人とは根本的に相性が悪い」

そう感じているとき、世の中のどこかに「悪い相性」という物体が客観的に存在するわけではありません。
振り返ってみると、きっかけはほんの些細な出来事、「初対面のときに挨拶をしてくれなかった」とか、「会話の中で、少し気になる一言があった」とかだったことが多いです。
ただそれだけの「起こったこと」に対して、「あの人は私を嫌っているんだ」という解釈を乗せ、その後も相手の言動を見るたびに「やっぱりそうだ!」と解釈を補強する事実ばかりを集めてしまう。そうして解釈に解釈を重ねた結果、あたかも「あの人は私を嫌っている」という歴然たる事実が存在するかのように思い込んでしまうのです。

弁護士が相談の中で行う「主観と客観の切り分け」は、単に裁判の準備をするためだけのものではありません。実はこれこそが、泥沼化した交渉を解きほぐす最大の糸口になります。
「過去に起こった事実」そのものは、タイムマシンでもない限り変えることはできません。

しかし、「事実と解釈がぐるぐる巻きになった糸」をほどくことは、今この瞬間からでも可能です。
それがほどけると、「挨拶をしてくれなかった」のは、あなたを嫌っているからではなく、ただそのとき相手が重大な悩みを抱えていて周りが見えていなかっただけ、そういった違う可能性が開きます。
あんなにも固く、歴然とした「不変の事実」に見えていた不仲や苦しみが、自分一人の解釈だったかもしれないと区別した瞬間に、ふっと軽くなる。
過去の事実そのものは変わらなくても、その過去が持つ「意味」が変わるのです。

そして自分の中での解釈と、相手に接する態度が変われば、相手の態度も変わる可能性があるのです。そうなれば、法律問題に発展せずに和解できることになりますので、それが一番理想的だと思います。

しかし、やはり理想とは程遠く、法的な問題に発展してしまうケースも世の中には一定数存在します。

もし今、誰かとの関係に苦しんでいたり、大きな壁に取り囲まれて、行き詰まったりしている方は、
一度立ち止まって、自分にこのように問いかけてみてください。
「今自分が苦しんでいるのは、実際に起こった出来事そのものだろうか?」
「本当に起きたことは何か、それにどんな解釈を巻きつけてしまったのか?」と。

和敬法律事務所は、複雑に絡み合ってしまったご相談者様の事実と解釈の糸を、一つひとつ丁寧に緩めていくお手伝いをしたいと考えています。
何か人間関係でのお悩み事があれば、一度、法律の専門家に相談してみませんか?
実際に起こっている事実を客観的に観察して、最適解へ導くお手伝いをさせていただきます。

些細なことでも構いませんので、お気軽にご相談ください。
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